「ピースブレーカー」 アーロン・クォックの災難、あるいは粗忽警察
深夜に車で歩行者を跳ねてしまった刑事が、死体を抱えてウロウロするハナシ、と言うわけで、「粗忽長屋」か「ハリーの災難」か、というハナシかと思ったら、全然違った。なかなかどうして、そのちょっと先まで行く、飽きさせない映画であった。
実は、死体は前半で一回隠すことに成功するのだ。
しかし、その直後、何者かから「死体をよこせ」と連絡があって、、、というハナシ。
死体を抱えてウロウロする悪徳刑事に、最近どの香港映画を観ても出てるアーロン・クォック。
メッチャしぶといラスボスに「誘拐捜査」のワン・チエンユエン。
このしぶとさはワン・チエンユエン以外では成立しないだろう。
香港映画界の宝ではないかと思うくらいのワルワルしさ。
やっぱりサスペンス映画はワルワルしい奴がいないと面白くならない。
そう、サスペンス映画なのである。
スゴいサスペンス。
しかし、一方で「粗忽長屋」でもある。
コメディでもあるはずである。
つまりこの映画は、サスペンスとコメディを両立させた稀有の映画でもあるのだ。
ワタクシ空中さんはよくタランティーノを「コメディとサスペンスのバランスを取るのが上手い」と評しているが、タランティーノのようにサスペンスシーンとコメディシーンがバランスよく配されているというのとも違う。
コメディシーンがそのままサスペンシーンでもある、という稀有の演出を実現した映画でもある。
笑えるシーンが笑えれば笑えるほど、サスペンスフルになるというある意味最強の構造。
前半、アーロン・クォックが死体をなんとか○○の△△に隠そうとするシーンなど、不謹慎さと笑いと恐怖が入り混じった屈指の名シーンではないか。
後半もワン・チエンユエンのバケモノっぷりなども、怖ければ怖いほどどこか笑ってしまう。
恐怖と笑いが入り混じって相互に効果を上げているさまは、まるで甘みと辛味が相互に高め合うするオタフクのお好み焼き用ソースのようである。
相反するものがお互いを高めあうものの比喩をしばらく考えてましたがこれで精一杯でしたスイマセン。
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