「ほんとにあった!呪いのビデオ 64」 新機軸満載の意欲作
残念ながら幽霊というものをまだ見たことがないので判らないのだが、幽霊というものは立体的に見えるものだろうか。
我々がTVモニターやスクリーンに映しだされたモノを「立体的である」と感じるのは、(左右の肉眼で見たものが映しだされているのではない以上)主に陰影と遠近法によるだろう。
「陰影」という以上どこかに光源があるはずなのだが、いわゆる霊的な現象が、その現象の観察者と同一の光源の影響を受けないであろうことは想像できる。なにしろ「あの世」の物なので、あの世の光源(?)に照らされたものが、何らかの回路を通ってこの世で見えているだけなのだ。
そもそも照らされるもクソも、半透明だったりして光が反射するかどうかも怪しいと言えば怪しい。
などと考えていると、やはり幽霊が平面的に見える、というのは正解なんだろうかねぇ、、、
「怨讐」
廃墟を探検していてポルターガイストに会うハナシ。
「ほん呪」としても、そもそも日本全体の傾向としても、こういう人間的な姿の見えないポルターガイストは珍しい。派手なポルターガイスト現象が起きた瞬間、一気にバタ臭くなった気さえした。
そんな意味で新鮮な驚きがある。
が、タイトルが大げさ過ぎ。
「トイレ」
投稿者のカレ氏は、とあるオカルトサイトの記事に従って、深夜の公園のトイレで霊を呼びだす儀式を行う。カレ氏はそういう怪しい動画をネットにアップするのが趣味なのだ。
カレ氏と連絡がつかなくなった投稿者は、カレ氏の部屋で見つけたスマホから、公園のトイレの動画と、当の彼氏の部屋のトイレの動画を見つけるが、、、
というハナシ。
ちょっとストーリーが凝ってる。
製作委員会はカレ氏の行動の元になったオカルトサイトの管理人と連絡をとり、例の「公園のトイレの儀式」の記事について尋ねるが、その答えは驚愕すべきものであった、、、
コレこそちゃんと取材して追いかけるべきなような気がするが、、、
自室のトイレの窓の外から真っ赤な顔をした子供が覗いているが、この顔が結構立体的。
しかし、微動だにしない。
平面的であることと同様に、微動だにしないっていうのも、心霊写真からの刷り込みなのかなぁ、、、
「赤い傘」
撮り鉄のカレ氏が踏切脇で電車を撮影しようとしているところを撮影するカノ女。
通り過ぎる電車がマッキッキで西武線にしか見えない。
オレは明日西武線に乗ってこの踏切を通過するんだろうか、、、
「シリーズ監視カメラ 覗き穴」
ドアの覗き穴に防犯用にカメラを仕掛けていると、なんと向こうから覗き込む顔が、、、
意外なことにオトコの顔。
覗き穴の視界に上から入ってくる意外性がちょっといい。
普通は下から入ってくるじゃん?
「寺跡」
触るとタタリがあると言われている「首なし地蔵」にわざわざ大人数で触りに行くハナシ。
撮影者を含めて4人以上いる時の定番カメラワークで、ひとりひとりの上半身を順番にパンしていくが、最後の1人まで行って戻ってきた時に、ひとりの女性(何故かこのヒトだけ「アサミ」と名前バレしてる)に背後から不気味なオンナが絡みついている。
惜しむらくはカメラが戻ってきた時のアサミ嬢も絡みついている不気味なオンナも微動だにしないこと。
まるで、一度カメラが通りすぎたあと、慌ててハケて、戻ってきた時の誰もいない空間に静止画を合成したように見える。
「人身事故」
本当の電車事故の現場で撮影している。
臨場感はあるが、「不可解な現象」そのものはどうということはない。
その存在が半透明でさえなければ、割りとフツーの出来事ではないか。
「スケープゴート 後編」
まあ、色々ゴチャゴチャやっておりますが、要は民俗学のゼミのチームが呪いを封じ込めた箱盗んできて開けちゃって、案の定呪われたって言うハナシです。
問題は、そのゼミの部屋に忍び込んで掴まった少女の存在だろう。
ゼミのチームが箱を盗んだのと同じ県に旅行に行った際行方不明になるが、ゼミ室に忍び込んでいるところを発見されて以来、精神のバランスを崩していて、さらにはゼミのメンバーが呪われた結果遭遇する悲劇を絵に描いて予言する。
彼女の存在がこのハナシに不思議な陰影を与えている。
一方で、菊池カントクの「探検趣味」が再度爆発している。
投稿者のカレ氏が元あった場所に埋め戻したらしい問題の「箱」を、わざわざ場所を特定して掘り返しに行くのである。
しかも一度場所を間違えて道に迷ったところを地元のヒトに助けてもらい、その時点でいい加減夜になっているのに、そのまま再度捜しに行くのである。
朝になるまで待てばいいのに、、、
しかも深夜の大冒険の末発見した箱にたいして、演出補どもに絶対やってはいけないことをヤラせるのだ。
だからそれやっちゃダメだって言ってるのに、、、
しかしここからの演出は面白い。
探検チーム(菊池と新演出歩のオトコ二人)と、件の少女の元に詰めている川居ちゃんを含む女性演出補二人の様子をカットバックで描いていくのだ。
つまり、同時刻に二箇所で起こった出来事を切り返して描いていて、コレがなかなかの迫力。
まるで映画みたい。
この手のドキュメンタリーとしてこの演出法は賛否両論あるだろうが、面白いことは面白い。
ラストに製作委員会の推論として明かされる少女の意外すぎる「正体」とあいまって、全体としてなかなかの満足感のあるエピソードになった。
しかしこの少女の「正体」はちょっと無理だなぁ、、、
発見時にもその後も病院に行ってるんだもん。これでそんな「正体」がありだとしたら、ちょっと我々の常識を覆す。映画だったら何らかの説明がないと、ふざけんな状態だろう。
ココさえちゃんとしてたら、それこそ坂本一雪時代を越える「究極の実在系」に成功したということになるんだが、、、
とは言うものの、この巻はのっけから新機軸もあり、満足感で言えばかなりのもの。
ところで、3巻前まで演出補としてド厚かましい雰囲気を醸し出していた森澤は、最近姿を見せないが、スタッフにはちゃんと名前を残している。
まさか、ここ数巻の好調は、森澤の手によるものだとでも言うのだろうか、、、
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