2010.06.30 Wednesday
「イングロリアス・バスターズ」 主役はブラピじゃありません
前にも書いたがタランティーノはダラダラした会話が好き。ここに来てついに自らを「会話の映画作家」であると規定したようだ。
ナチス占領下のフランス。ナチスに家族を皆殺しにされたユダヤ人少女ショシャナは3年後、パリで小さな映画館を営んでいた。一方その頃フランスにアパッチの血を引くアメリカ人中尉に率いられたバスターズと呼ばれる部隊が潜入、ナチスを次々に血祭りに上げ、ナチス将校達を震え上がらせていた、、、
などというストーリーからハデなアクションの連続を期待するとスカされる。そう言うモノはほぼ、無い(ちょっとはあるけど)。代わりにあるのはスリルに満ちた「会話」なのだ。
ユダヤ人をかくまうフランス人とナチスの会話。ナチスに化けて潜入したイギリス人将校とナチスの会話。家族を皆殺しにされたユダヤ人少女(の三年後)とナチス(皆殺しにした本人)の会話。レジスタンス女優とナチスの会話。
会話はいつも騙し合いであり腹のさぐり合いだ。探り合った結果、惨劇が始まったり上手く切り抜けたりする。この映画は、ほぼ、この会話と会話の果ての緊張と緩和で成り立っている。
驚くべきは今までのグダグダしたストーリーと直接関係のない会話と違って、ちゃんと展開に有機的に結びついた、しかも面白い会話になっている事だ。インディアンポーカーみたいな名前当てゲームから惨劇にいたる過程なんて本当に面白い。
くだらないゲームの話から徐々に核心に迫る会話のうまさと、狭い部屋の中で切り返すカメラワークの鋭さが相まって、心憎いばかりの面白さ。
タラ坊、上手になったねぇ、、、
くだらないゲームの話から徐々に核心に迫る会話のうまさと、狭い部屋の中で切り返すカメラワークの鋭さが相まって、心憎いばかりの面白さ。
タラ坊、上手になったねぇ、、、
会話の片方はほとんどナチスな訳だが、その中でも大半を担当するのは「ユダヤ・ハンター」の異名を取るランダ大佐。クリストフ・ヴァルツなる役者さんが演じているのだが、このヒトの芝居がまた上手い。
陽気なのにイヤミで、高慢で、鋭くて、自信家で、卑怯という複雑な人間像を喜々として演じきってる。一般にブラピが主演だと思われているが、出演時間の長さから言っても実質的な主役はこのヒト。
そう言えば「家族を皆殺しにしたナチス将校に数年後遭遇し、声でそれと気付く女」って描写はオランダが舞台の「ブラックブック」にもあったなぁ、、、例によってタラ坊の映画は原典が取りざたされているが、案外このあたりもパクッたかも知れない。
ところでイタリア人の振りをせざるを得なくなったブラピが一生懸命シャクレようとしてるのは、「知り合いのイタリア人(イタリア系)を思い出したらタランティーノだった」ってギャグなんだろうか。
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