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評価:
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¥ 3,262
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観はじめてすぐ、「ああ、コレは傑作かもしれないな、、、」と思うことがある。
韓国の歌舞伎町のようなところ(多分)で、デリヘル嬢と客が待ち合わせるシーンで始まる。
風俗嬢と客が待ち合わせる薄汚い街。
この街並みが美しい。
もともと美しい街並みを美しく撮っても普通だ(イヤそれも難しいんだけど)。
卑しい街を美しく撮る。
そこで行われている人間たちの営みは卑しいかもしれないが、心は美しいのだ(ヒトによるけど)。
特に働いているオンナたちの心は。
傑作の予感に満ちている。
元刑事のデリヘル経営者ジュンホは最近おかんむりだ。ここのところデリヘル嬢が立て続けに二人も行方不明だ。多分、彼の用意した支度金を持って逃げたのだ。あのクソアマ共殺してやる!
ところがふと気がつくと消えた二人は同じケータイ番号の客についた後に消えている。
アレ?さっき電話で風邪ひいたから休ませてくれって言ってたミジンを無理やり着かせたのも、同じケータイ番号じゃなかったっけ?、、、
ここからジュンホの必死の追跡劇が始まる。
このジュンホ役の疲れた表情がいい。そりゃ疲れるだろ。元刑事がデリヘル経営だ。いろんな事があったに違いない。
だが彼はいったん事が動き出すと意外なパワーを見せつける。
走る、暴れる。
相手が容疑者だろうと警察だろうと関係ない。目的完遂のためには誰だろうとケ飛ばす。
彼のパワーの源泉は怒りと不安だ。
「オレの商品傷つけやがって!」と言う怒りと「もしかするとオレが無理やり店に出したせいで、、、」という不安。
冒頭のデリヘル嬢も、風邪をひいていたデリヘル嬢も、同じ住宅街に連れ込まれていたことが判明する。
この坂の多い住宅街でジュンホは犯人と出っ食わすのだが、このあたりのシーンは濡れ濡れとした夜の道路と、坂を利用した縦の構図で工藤栄一を思い起こさせる。
そうだこの映画は「野獣刑事」に似ている。
これもまたモデルとなった事件があったそうだが、なんとなく「野獣刑事」を観ているのではないか、と思わせる。最後の被害者に子供がいる、その子供と主人公の交流がある、後味が悪い、などストーリー上の共通点が多い。
なにより主人公がロクデナシな点が似ている。
このロクデナシが徒手空拳で犯人について調べ始め、なんとかミジンの居場所を突き止めようとする過程のしつっこさが良い。役立たずの部下を怒鳴りつけたり、同じく役立たずの警察を利用したりして、真相に迫る。
ロクデナシは当初、先にいなくなった二人のオンナは逃げたと思っている。
が、同じ客に付いたあと姿を消したことに気付き、今度はこの客に売り飛ばされた(乱暴なお土地柄なのね、、、)と思うのだ。
ところが、調べて行く途中で突然、「あ、コレは殺されてるわ、、、」と気付く。
このシーンがたまらなく怖い。
セリフによる説明は何も無いのだが、ロクデナシの眼前にさらけ出されたヒントと、ロクデナシの表情で、「あ、今確信したな、、、」と判る。
上手いなぁ、、、
主人公と犯人はポスターのビジュアルやピリングを見てもダブル主演扱いなのだが、犯人の描き方はやや中途半端な印象。
全く訳の分からない不気味なオトコにしても良かったと思うが、なぜ、彼がこうなってしまったのか、描きそうで描かない隔靴掻痒感がある。
この宙ぶらりん感がリアルなんだよと言うつもりかも知れないが、ココにイケメン俳優を持ってきたことで、なんか配慮したんじゃねーの?と言う気もする。
途中ダレるところもあるのだが、証拠不十分だの逮捕の経緯に不明朗な点があるだので釈放せざるを得なくなってからまた、とんでもないスリル。ラストの格闘シーンは蛇足な感じもあるが、この容赦の無い苛烈さは、ちょっと日本映画では考えられない。
いやホント。日本映画にも得意なジャンルがあって、良い映画はいっぱいあるのだが、ことこういうノワール系に関しては、韓国に大きく水をあけられてしまったなぁ、、、と言う感じ。
何時までもうじゃじゃけた「なんたらかんたら The Movie」ばっかり撮ってるから、、、
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