2009.01.28 Wednesday
「パンズ・ラビリンス」 スペインの「殺し屋1」(の悪役)
内戦下のスペイン、母親の再婚相手の将校がレジスタンスと戦う山中へ向かう馬車の中、少女は一冊の童話を読んでいた。正義と真実が支配する地底の王国の王女が地上をひと目見たくて逃げだしたが、王と王妃はいつか娘が生まれ変わって戻ってくると信じていつまででも待ち続けている、と言うハナシ。少女は新しい父親が詰める前線基地についたその日に、基地に隣接する森の中で件の地底の王国の入り口を発見してしまう。
当然、観客は「ははぁ、コレは少女の幻想と現実をない交ぜにして描く映画だな、、、」と思う。
事実ほとんどのシーンはそれで済む。地底の王国への存在に気づいているのは少女だけなのだ。
少女は自分が家出した王女であることを証明する為に、ギリシャ神話のパン(牧神)のような姿をした地底の門番の提示する三つの難関をクリアしなければならない。当然少女は王女じゃない訳だが、ツラい現状から抜け出すために必死でクリアしようとする姿が涙をそそる。
以後、映画は少女の奮闘と、父親のレジスタンスとが平行して描かれる。二番目の難関に出てくるクリーチャーが評判になっているが、確かに一体全体どうすればこんなこと思いつくんだろうと思うような造形。同じ監督の「ヘル・ボーイ2」の最近やってるCMに出てくるクリーチャーに似てるのは御愛嬌。
この映画が面白いのは、端に少女の幻想が現実に侵食してくるのみならず、現実の方からもファンタジーに歩み寄ってくるところだ。冷酷で残虐な新しい父は、徐々にクリーチャー化していく。オレは鏡の前のシーンで大笑いしてしまった。ストーリーは悲惨だし地底王国のバケモノは怖いし映像は格調高いだけに、なんか突然ギャグをかまされたようだった。
映画は最終的にはスペイン内戦の帰結にシンクロして行く。もしかするとスペイン人が観ると泣くのかも知れない。
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