「消された女」 韓国映画とヤラセとテレビディレクター
実話が元になっているという触れ込み。
韓国映画では「殺人の追憶」「カエル少年失踪殺人事件」と過去二作、実在する事件を題材にとった傑作と出会っているので観てみました。
韓国では本人や公的機関の同意(承認)がなくても家族二人と医師の同意があれば精神病院に強制入院させられるらしい。
そしてこの制度を利用して家族を勝手に入院させて財産をどうこうしちゃう事件が続発したらしい。
というわけで、この制度を利用したストーリーを作った、ということで、実際にここで描かれているようなストーリーがあったわけではないのではないか。あまりにもストーリーがフィクショナルすぎる。
主演は「韓国の井上和香」ことカン・イェウォンさん。
前にも「韓国の井上和香」だな、と思った女優さんがいたぞ、と思ったら、WOWWOWでやってた「バッドガイズ」に出てたカンさんだった。
井上和香のような巨乳ではないが(スタイルは抜群)、演技力は井上和香の100倍くらい。
「バッドガイズ」のときはちょっとアイドルっぽいヒトなのかな、と思ったが、とんでもない会陰技力の持ち主でした。ゴメンナサイ、、、(そういえば、「世界一ヒトを殴るのが似合う役者」、マ・ドンソクを発見したのもこのTVシリーズだったっけ)。
実際、この映画はカン・イェウォンさんの演技力がなければ成立しない企画ではないか。
ラストでそれまでの人格とまるで違う人格を演じてみせるシーンまで、ほとんどカン・イェウォンさんの演技力に鼻面引き回されてるうちに終わってしまう。
女性が不当に精神病院に収容されてしまい、脱出しようと四苦八苦する映画は何故か多い。
当ブログで扱っただけで「チェンジリング」「エンジェル・ウォーズ」「ザ・ウォード」と三作も有る。
いずれの場合も収容されるのは女性で、男性が収容(不当に)される映画はない。
しかも「チェンジリング」は実話。
なんだろう、コレは。
内田樹先生の言う「アメリカン・ミソジニー」が韓国にも伝播したのだろうか。
「精神病院に不当に収容される女性映画」
というジャンルについての考察をいつかしてみたい。
ところで、ですね。
この映画にはもうひとつ、脚本上の瑕疵と言ってもいい考察に値する点がある。
この映画のもうひとりの主人公、映画全体の狂言回しとも言うべき男性の設定だ。
「敏腕テレビディレクターとしてもてはやされていたが、ヤラセ演出が発覚し左遷され、自らの復権をかけて今回の(映画の題材となっている)事件の真相に迫ることに情熱のすべてを燃やす」
というキャラクターは、「カエル少年失踪殺人事件」と全く一緒ではないか。
実話を描いた映画でこの共通ぶりはちょっとマズいんじゃなかろうか。
韓国には明らかにこの「ヤラセ発覚で失墜したTVマンが復権を目指す」という類型に対する共通認識があるのだろう。「消された女 カエル少年失踪殺人事件」でググっても特にこの件に関する指摘は出てこないようである。
あまりにも当然のことだから、取り立ててヒトビトの意識に上ってこないのだろうか。
今後もこの「復権を目指すTVマン」が主人公の韓国映画は折りに触れ、登場するのだろうか。
日本で言えば殴り合いの喧嘩をした中高生男子は親友になる的なアレなのだろうか。
ちょっと違うだろうか。
今回は
「精神病院に不当に収容される女性映画」
と
「韓国映画におけるヤラセ発覚ディレクター類型説」
という2つの研究テーマを得ました。
とても有意義な映画体験だったと思います。
イヤ、マジで。
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