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「ソウル・ステーション/パンデミック」 韓国のアニメ事情と社会問題について

 という訳で、「新感染〜ファイナル・エクスプレス〜」の前日譚。

  監督のヨン・サンホはもともとアニメ作家で本作の実写化をオファーされたが、どうせなら新作をと考え、本作のラストから始まる「新感染〜ファイナル・エクスプレス〜」を作ったということらしい。

 

 本作を観てわかることは、ヨン・サンホ監督に、「アニメ作家である必然性」は無いな、ということ。
 本作もフツーに最初から実写で作られるべきモノであるが、おそらくは実写よりは低予算で作れる、と言う程度の理由でアニメなのだろう。

 

 なぜなら本作にはアニメとしての楽しさなど微塵も無いから。

 

 「アニメとしての楽しさ」というのは若いヒトには通じにくい概念だろう。
 あまりにも当たり前に全てがアニメとして存在していて、「何故アニメなのか」などという問いが頭に浮かぶ隙はないと思われる。

 コレはワタクシ空中さんは、そのアニメ黎明期に手塚治虫という、内部に様々なダイナミズムを抱え込んだ大天才にして巨人を擁する日本独自の現象だろうと思っていた。

 

 手塚治虫はディズニー的なアニメの楽しさに狂おしいばかりに憧れるあまり、とにかくアニメを量産しなければならないという使命のもと、低予算でアニメを「毎週毎週」制作し続けるというムチャクチャな潮流を定着させたヒトである。

 一方で映画においては、TVアニメの罪滅ぼしのようにアニメ本来のテーマである「メタモルフォーゼ」にこだわり続け、比較的良質なアニメを作っていたが、だいたいコカしていた。

 

 何故コカしていたかも重要なテーマであるが、あまりにもヨン・サンホと関係ないので、今回は割愛します。

 

 そう。
 アニメーションとはもともと「アニミズム」と同源の言葉であり、「霊魂のないモノに霊魂が宿る」ことなのだ。
 従って、ネズミや猫や人形や車が、あたかも霊魂があるかのように歌い、踊り、暴れまわり、泣くアメリカのアニメは、「アニメとしての楽しさ」を湛えている、ということになる。

 

 日本のアニメはその後手塚治虫的な低予算量産体制を独自に克服し、世界的な(ある意味根源的な)アニメの楽しさと全く別にとんでもないレベルに達したのだが、そのハナシも今回は割愛します。

 

 そんなわけで、「実写で撮る予算がないからアニメ」で撮るアニメ作家が評価されている、というのが韓国アニメ界の現状なのだな、と思うのであった。

 

 で、ですね、「アニメである必然性が無い」ことに目をつぶれば、本作も「新感染」同様よく出来てます。
 やはりメインは人間ドラマに置かれているが、ちゃんとパニック下における人間の反応をドラマ化できていて、巧いなぁと思う。

 

 特に感心するのは、ゾンビを使って、韓国の、他人に対する無関心、ホームレスから無職、売春するしか生きるすべがない少女に至る貧困層の問題を抉り出すことに成功していることだ。

 

 「新感染」はスター俳優を使った初の実写ということで、ある程度ヒットを狙った娯楽作品だったのだな、と分かる。
ゾンビ映画としては珍しく救いがあった「新感染」に比べ、本作にはほとほと救いがない。
 なにしろ恋人に売春を強要されてる少女がホームレスに紛れて逃げるハナシである。
 生き延びても生き延びられなくても行く手には絶望しか無い。
 監督の感じている絶望感がヒシヒシと伝わってくるではないか。
 ヨン・サンホ先生、ハッキリと社会派なのだ。

 

 で、ですね。
 「アニメ作家であること」が金の問題に過ぎなかった証拠に、ヨン・サンホ先生の次回作「サイコキネシス」も実写だそうです。
 さもありなん。

JUGEMテーマ:映画

at 21:21, 空中禁煙者, アジア

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