「必殺始末人」 トシちゃん渾身の殺陣が堪能できる
WOWOWで鑑賞。
正直言ってたいしたことなく、とても一般にオススメできるレベルではないんだが、コレだけは言及しておきたい。
制作年度は1997年。
コレはつまりテレビで必殺シリーズが作れなかった時代であり、おそらくは必殺シリーズのスタッフの残党がなんとかカネとキャストをかき集めて作った一本。
当時既にVシネのシリーズを作るにあたって、権威付けのために一本目だけ劇場公開する、と言う手法が確立しており、テレビシリーズより劇場映画のほうが安易に作れたのだ。
失礼ながら残党のみなさんが作ってるせいか、ストーリーも設定も今までの必殺シリーズのエッセンスを抽出したような作りで、オリジナリティには欠ける。
ナンノの殺し技はシリーズ第一作「必殺仕掛人」の梅安先生と同じであり、梅安先生そっくりの前垂れ式の顔隠しまで使っているが、すっかり顔を見られてから殺す直前におもむろに顔に垂らす、と形骸化してしまっているのはご愛嬌。
若手の後藤光利がつかう手槍も「仕置人」で沖雅也が使うものと全く同じである。ハッキリ言って同じ小道具が残っていたのを使っているのではあるまいか。
ストーリー上、一話の中で元締めが代わる、と言う新手があり、コレが唯一の新味ではある。
ココまではどうでもいいのである。まあ、苦しい時代に頑張ったな、と言う程度のもんである。問題はここからだ。
この映画の主役は実は、一味の中の剣豪役、田原のトシちゃんなのだ。
そして、トシちゃんはこの映画で瞠目すべき殺陣を見せている。
コレには腰が抜けるほどビックリした。
コレほどの殺陣は若山富三郎先生が亡くなって以来見たことがなかった気がする。
それほどスゴい。
必殺シリーズと同じく、田原のトシちゃんもこの時期は不遇の時代だったはずだ。
そして同じく苦境を抱えた両者の思惑が一致したのだろう。
コレほどの殺陣は一朝一夕の稽古で出来るものではない。
おそらくは相当時間をかけて練習したはずである。
稽古をつけて、フィルムに定着させたスタッフと、コレ一発でなんとかメジャーシーンへの復帰を目指すトシちゃんの、双方の氣魄がヒシヒシと伝わってくる。
殺陣については最近の「必殺仕事人20○○」のヒガシもなかなかシャープな動きを見せて頑張ってはいるが、あんなもんじゃない。
まさに正統的な「殺陣」であり「チャンバラ」なのだ。
しかしその後トシちゃんが剣豪役者として名を馳せたと言うハナシは訊かない。
もったいないなぁ、、、
正直言って腕利き刺客としての殺気が感じられるかと言えば、まだまだなのだが(コレはヒガシも松岡クンもまだまだ)、少なくともナニをしなければならないかは分かっている演技。
藤田まことの中村主水も「いざとなれば仲間も殺す」と言う殺気を漂わせられる様になるまでには結構時間がかかっているのだ。
このシリーズもテレビシリーズに昇格して2クール終わる頃には、トシちゃんも殺気くらい放てるようになったのではないか。
監督はもともと必殺シリーズのカメラだった石原興。これまでにも必殺シリーズのの演出を何本か手がけているが、劇場用映画の監督としてはコレがデビュー作。
このヒトは最近でもヒガシの「必殺仕事人20○○」でも、ほとんどシュールなまでの映像美を追求していて、工藤栄一も深作欣二も亡き後、必殺シリーズを任せられるのはこのヒトしかいないなぁ、と言う感じ(と言ってもこのヒトももう70代半ばなはずだが)。
今回WOWOWで「劇場版必殺シリーズ」の一環として一作目だけ放送してもらえたが、実はVシネであと2本ある。
慌てて近所のレンタルビデオ屋に行ったが、まあ、置いてないよね。AMAZON等にまだ在庫はあるようなので、買えば観れるんだろうが、、、
どうもVシネ版の完結編で一味は江戸を脱出しただけで死んではいないようなので、なんとかヒガシの「必殺仕事人20○○」にトシちゃん演ずる山村只次郎を出せないもんだろうか。
それともやっぱりトシちゃんとジャニーズの共演はまだ無理なんだろうか。
そういうことばっかり言ってるから日本のドラマってダメになるんだよな、、、
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