2008.05.20 Tuesday
「パプリカ」 夢以外全部沈没
十五年前、筒井先生の原作を読んだとき、「コレ、ハリウッドで実写映画化したら、恐怖のあまり発狂者続出するんちゃうか、、、」と思ったものだ。筒井先生の端正な筆致で描かれた「夢が現実を侵食してくる恐怖」はそれほど強烈だった。しかもコレ、今なら日本でも実写化出来るはずである。
しかるにこれは何事であろうか。
こんなもん今さらアニメ化してどないすんねん。「夢が現実を侵食する」などというハナシをアニメでやってはいけません。なぜならアニメとはもともと夢のようなものだから。
何をやっても許される夢のようなアニメの世界であえて夢を描いても、現実との落差がつかないではないか。
なぜそれが解かりませんか。
この映画の製作者たちは、自分たちがあえて隘路を選んだことに気づいてないらしく、ヘーキで現実側にアニメっぽいキャラを出してくる。これじゃあ恐怖も何もないだろ。おそらくは「ホラ、この悪夢の大名行列、すごいだろ、ファンタジックだろ」と言いたいのだろうが、このハナシのキモはそんなところにはない筈だ。夢の中がどんなにすごくてもダメなのよ。それは別のハナシでやってよ。
問題の日本人形のシーンにしても、自分たちではそれなりの工夫をしたつもりなのだろうが、全然ダメだろ。原作以上に普通の出かたしてどうすんだよ。せめて原作を超える気概を見せてよ。
監督の今敏氏(というよりマッドハウス?)はいまどきハズレのないアニメ作家として有名らしいが、どうもそもそもこのハナシがホラーであることにすら気付かず、「アニメ」と「夢」と言うキーワードだけで作ってしまったような印象。このハナシの重要なファクターである「恐怖」がすっぽり抜け落ちてしまった。だからアニメでも出来ると思ってしまったのだろう。
アニメ作家として実力よりも、原作を選択する能力に問題があったのかもしれない
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