「呪怨:呪いの家」 心霊相対性理論
Netflixオリジナルだが円盤化されたので扱って見たいと思います。
1話30分弱で6エピソード。つまり、連続して3時間弱の映画として見れます。
「呪怨」もかれこれ20年にわたり断続的に新作が作られ続けているが、「リングもの」と同様、最近は裏切られ続けてるような気もする。
それでも観てみようと思ったのは、脚本が高橋洋だから。
本ブログでは過去何度も高橋洋の業績について言及してきた。
1990年代後半から2000年代前半のある時期、高橋洋は日本映画界を牽引するイノベーターのひとりであった。
なにしろ「女優霊」「リング」の脚本家であり、オリジナルビデオ版「呪怨」「呪怨2」の監修である。
とは言うものの、高橋洋も「恐怖」あたりから訳のわからない世界に入った気配を感じさせたが、、、
さて、オープニングで、「実は『呪怨』は事実をもとにしており、この作品はその元になった事件を描いたものである」と出る。その意味ではダン・オバノンの「バタリアン(しどい邦題、、、)」に似ている。
あれも「ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』は実は実話(シャレにあらず)だった」という前提の脚本だった。
さらに、「呪怨」の元になった実話、という前提のため、本作には伽椰子も俊雄クンも登場しない。それ、「呪怨」って名乗る必要あるかなぁ、、、と思う。
正直言って、高橋洋が新しいホラーの脚本を書いていたら、
「アレ?コレなんか『呪怨』に似てきちゃったなぁ、、、だったら商売的にも『呪怨』に乗っかっちゃった方が有利かな、、、」
とか思って一ノ瀬隆重に声をかけた、あたりが真相ではないか、などと邪推してしまう。
一方、最初の「呪怨」オリジナルビデオ版は1999年の発表なので、「元になった」事件を描くということで、時代設定が80〜90年代に設定されている。
そしてその時代の実際を背景に描いている、という触れ込みになっているが、、、
殆どの事件はテレビのニュースとかに出てきて紹介されるだけ。
唯一「M」君は重要な情報をもたらす存在として画面に登場するが。
さらに名古屋妊婦切り裂き殺人事件や、東電OL殺人事件を彷彿とさせる展開があるのだが、彷彿とさせる演出ってナニ?と思う。
実在の事件を彷彿とさせるから何なの?
視聴者が
「おお!コレは○○事件と同じではないか!!」
って感動すると思うのだろうか。
どうもこの辺の趣向がよく解らない。
「M」君は「M」君そのものとして堂々と登場し、主人公に重要な情報をもたらすのだが、コレもなんとなく納得がいかない。
「M」君って別にこういう情報持ってるキャラじゃなくない?
「M」君を出したかったのは分かるが、この瞬間、他のこじつけ案件と同じになってしまう。
伽椰子も俊雄クンも居ない。
時代を描くのも中途半端。
じゃあ、一体全体このドラマはナニをやっているのかというと、、、
そもそもなんで「コレ、『呪怨』に乗っかれるんじゃね?」と思ったかというと、「家」である。
そうだ。「家」があった。
「呪怨」の主役は伽椰子と俊雄クンともうひとつ、あの「家」ではないか。
このドラマは伽椰子と俊雄クンのような特定の人物では無く、あの「家」を巡る物語として展開する。
「家」を巡る物語、特定の「家」に入ったものが呪いを受ける、というハナシなら、かろうじて「呪怨」を名乗れんじゃね?ということなのではないか。
そして、「家」という特定の「地点」で起きることがこのドラマのテーマである。
ある地点に呪いが発生すると、時空が歪む。
コレがこのドラマのテーマなのだ。
それは、おそらくは質量があるところでは時空が歪み重力が発生する、という一般相対性理論が元になっているのではないか。
一度呪いが発生した例の「家」では、時空が歪み、「呪いの重力」が発生する。そして「家」に立ち入ることでヒトビトはブラックホールから抜け出せなくなったように、「呪いの重力の沼」に囚われてゆく。
このドラマは、この「呪いの重力の沼」に囚われたヒトビトを巡るストーリーを描いているのだ。
若い女性タレント(黒島結菜)のハナシを聞いて、何事かにピンと来て、調査を始めるオカルトライターに荒川良々。全くコメディ要素のないシリアスな荒川良々というのは珍しい、というかほとんど初めてではないか。
荒川良々は調査を進めるうちに黒島結菜の彼氏が「ある家」に立ち入って以来異変が起こり始めたことを突き止めるが、肝心の「家」の在り処を聞く前に彼氏は亡くなってしまう。当然、「家」の重力場に取り込まれてしまったのだ。
ストーリーはこのあと取り憑かれたように(取り憑かれてるんだけど)「家」を捜す荒川良々のエピソードをメインに進むが、同時にちょっと違う時代の「家」の重力に抗うヒトビトのエピソードを並行して描いていく。
しかし時代が違うことは徐々に意味を失っていく。
なぜなら時空が歪んでいるから。
「呪いの重力」に抗うヒトビトの人生は、時空の歪によって「時間」の観念を失い、互いに影響を与えあっていく。
この、「呪いの重力に抗うヒトビト」の人生模様は、みな、辛く、苛酷であり、ドラマティックに観ることが出来る。
しかし、怖いかというと怖くないよね。
ひとつには、ビデオ版の「呪怨」にあった、圧倒的に理不尽で無差別な凶暴さが無いこともあるだろう。
ビデオ版の「呪怨」は、もう、無条件に、一歩でも「家」に立ち入ったものは問答無用で殺していた。この凶暴さはスゴかったのよ。もう、理由もなにもない。とにかく殺す。逃げても殺す。郷里に帰っても殺す。もう、逃げ場が無い。
しかし、今回の「呪いの家」はある程度沼に沈めるモノを選別しているようである。
選別の理由はやがて来るシーズン2によって描かれるのだろうか。
この選別の理由を解き明かすには、「オカルト界のアインシュタイン」が必要になる気がするのだが、、、
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